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EU指令の調和規格の見方
2003/07/30
 EU市場への販売を意図した製品が、該当する指令の要求事項に従っているか否かを確認する手段の一つとして、EC官報で公表された調和規格を適用する方法があります。多くの製品群の調和規格が整備されてきた昨今では、この方法を用いることが最も一般的となっています。

 欧州の規格は、分野により、CEN、CENELEC、ETSIの3つの規格制定機関により作成・発行されています。これらの機関より規格が発行された時点では、EU指令の調和規格とはなりません。それらがEC官報により公表されて、初めて法的根拠を持った調和規格として位置付けられます。

 EC官報は、LシリーズとCシリーズの2通りに分類されています。規則など加盟国に対して拘束力を持つ内容はLシリーズで公表され、拘束力を持たない調和規格などはCシリーズの官報にて公表されます。

 以降はEMC指令を基に解説しますが、他の指令であっても基本原則は同じです。ただ、指令によっては手続きが異なる場合がありますので、適用する指令で定められている適合性評価の手続きに従って下さい。

 現在のニューアプローチ指令が適用された当初は、調和規格には適用の移行期間というものが定義されていませんでした。その間、多くの議論があり、その結果、EC委員会は1998年4月の官報より、移行の為の新たな定義を導入しました。官報のCシリーズで公表される調和規格には、下記の新たな項目が追加され現在に至っています。言葉が長いので、ここではDoCと略して説明します。

・Date of cessation of presumption of conformity of the superseded standard
 (旧規格の適合性推定の停止期限)

 DoCは移行期間という言葉こそ使っていませんが、運用上は移行期間の満了日と理解して差し支えないでしょう。それでは、このDoCの見方について、もう少し説明を加えます。

 最近発行されたEMC指令の調和規格(2003/C 172/02 - 2003.7.22)の一部を引用して解説します。情報技術装置のエミッション規格であるEN 55022は、調和規格上では次のように述べられています。

Reference and title of the standard Reference of the superseded standard Date of cessation of presumption of conformity of the superseded standard
EN 55022:1994
 
Amendment A1:1995
Amendment A2:1997
EN 55022:1987
Note 2.1
Note 3
Note 3
Date expired
 
Date expired
Date expired
EN 55022:1998

 
Amendment A1:2000
Amendment A2:2003
EN 55022:1994
and its amendment
Note 2.1
Note 3
Note 3
1.8.2005


1.8.2005
1.12.2005
注) O.J. No. 2003/C 172/02より引用

 先ず、表中の上段のEN 55022:1994ですが、これに該当する旧規格(superseded std)としてEN 55022:1987が掲げられており、そのDoC欄はDate expired(失効済み)となっています。即ち、EN 55022:1987は失効しており適用できないことを意味しています。従って、EN 55022:1994 + A1:1995 + A2:1997の適用は必須であるとの解釈になります。

 次に、表中の下段のEN 55022:1998ですが、これに該当する旧規格(superseded std)として前述のEN 55022:1994が掲げられており、そのDoC欄には2005年8月1日と書かれています。即ち、EN 55022:1994はこのDoCの期日をもって失効することを意味しています。よって、EN 55022:1994+A1+A2は、DoCの前日である2005年7月31日まで適用することができるとの解釈になります。

 また、EN 55022:1994は適用が必須と前述しましたが、それに差し替わる新しい版であるEN 55022:1998が公表されている訳ですので、旧版(EN 55022:1994)は適用せず、この新しい版(EN 55022:1998)のみを適用することも可能です。以上を整理すると下表のようになります。

規格番号 適用の可否
 EN 55022:1994  可(1998年版を適用しない場合は必須) ----> 2005.08.01で失効 
    A1:1995  可(1998年版を適用しない場合は必須) ----> 2005.08.01で失効 
    A2:1997  可(1998年版を適用しない場合は必須) ----> 2005.08.01で失効 
 EN 55022:1998  可 ----> 2005.08.01から適用は必須 
    A1:2000  可 ----> 2005.08.01から適用は必須 
    A2:2003  可 ----> 2005.12.01から適用は必須 

 なお、EC官報で公表されるDoCの日付については、CENELECが発行するEN規格で定められているdowの日付に設定されることがほとんどのようです。但し、例外もありますので、規格の適用にあたっては、必ず、官報のDoCの日付を確認されることを推奨します。下表はCENELEC規格の各日付の概要です。

CENELEC EN規格の各日付 解説
 Date of ratification (dor)  CENELEC BT(Technical Board)での批准日
 Date of availability (dav)  中央事務局からの配布日
 Date of announcement (doa)  国内レベルでの新規格の告示最終日
 Date of publication (dop)  調和国内規格の発行最終日
 Date of withdrawal (dow)  矛盾する国内規格の撤回最終日

 以上
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