EMIレシーバ・平均値検波器のパルス応答特性
2005年10月1日〜校正サービス開始!
SEP/5/2007
 弊社では、2005年10月1日より、CISPR 16-1-1の規定に基づいた平均値検波器のパルス応答特性の校正サービスを開始しました。

 現在、主要なEMI製品群規格では、電源線の伝導妨害波の許容値を、準尖頭値(Quasi-peak)および平均値(Average)の2通りの検波方式で測定した値で規定しています。

CISPRバンド 周波数範囲 IF帯域幅 妨害波許容値
A 9kHz〜150kHz 200Hz QP & Average
B 150kHz〜30MHz 9kHz QP & Average

図1 CISPR 22 電源ポートの伝導妨害波許容値
青線が準尖頭値(QP)の許容値
赤線が平均値(AVE)の許容値

 準尖頭値検波型受信機および平均値検波型受信機の技術仕様は、CISPR 16-1-1:2003で規定されています。このうち、準尖頭値検波器に対するパルス応答の校正(検証)は、弊社でもご提供していますように、一般に広く行われています。

 しかし、平均値検波器に対するパルス応答の校正(検証)は、あまり行われていないのが実情です。理由は、推測になりますが、専用の校正用パルス発生器が市販されていないことに起因しているものと思われます。

 平均値検波器のパルス応答の校正(検証)に使用するパルスは、準尖頭値(QP)検波器用のパルスとは大きく異なります。CISPR 16-1-1では、平均値検波器の校正(検証)用パルスとして、1.4/n mVs のパルス面積で規定しています。ここで、n はパルスの繰り返し周波数です。

 例えば、CISPR Band B(150kHz-30MHz)では、基準となるパルス繰り返し周波数を500Hzで規定していますので、1.4/500 mVs = 2.8 uVsの面積を持つパルスが必要になります。Band Bの全周波数帯域に渡って均一な振幅のパルススペクトラムを得ようとする場合、そのカギを握るのはパルスの立ち上がり速度とパルス幅です。パルススペクトラムの第1ヌルポイントを100MHzに設定したとすると、そのパルス幅は10nsになります。即ち、2.8uVs/10ns = 280Vという、高速で極めて高電圧なパルスが必要となります。この1.4/n mVsのパルスに対する受信機の応答特性は、起電力66dBuVの無変調正弦波信号に対する応答と同じでなければなりません。(CISPR 16-1-1, Section 6.4.1)

 CISPR 16-1-1では、平均値検波器のパルス応答特性を次の2つの特性で規定しています。

 1) 振幅関係 Amplitude relationship
      (CISPR 16-1-1:2003, Section 6.4.1)
 2) パルス繰り返し周波数による変化 Variation with repetition frequency
    (CISPR 16-1-1:2003, Section 6.4.2)

 1)は等価な無変調正弦波信号(e.m.f. = 66dBuV)に対する受信機の応答を基準とした場合、パルスに対する応答は-0.5dB/+2.5dB以内であることと規定しています。

 2)はパルスの繰り返し周波数を一定の範囲で変化させた場合、その応答は-1dB/+3dB以内であることと規定しています。図2の赤いラインで示すのが、パルス繰り返し周波数の変化に対する平均値検波器の応答特性です。平均値検波器では、パルスの繰り返し周波数に逆比例する特性で規定されています。図中の青、緑、桃の各ラインは、準尖頭値検波器の応答特性を参考までに示しています。
図2 準尖頭値検波器および平均値検波器のパルス応答曲線
 弊社では、EMIレシーバの使用実態も考慮に入れ、CISPR Band AおよびBand Bにおける平均値検波器のパルス応答の校正が必要であるとの判断から、今回、新たな高電圧パルス発生器を導入し、様々な技術的検証を行って参りました。

 この度、校正サービスとして皆様にご提供できる目処が立ちましたので、ここにご案内する次第です。国内では唯一、弊社より同校正サービスをご提供致します。

■ご提供できる標準校正の内容
  ※標準器群の技術的な制約から任意のパラメータでのご提供はできません。
平均値検波器のパルス応答特性 校正パラメータ
振幅関係 (CISPR 16-1-1, 6.4.1)
Amplitude relationship
(Absolute calibration)
 限度値
 規定値に対して+2.5dB, -0.5dB以内
Band A: 10k, 50k, 100k, 149kHz tuning
  frequency with 25Hz PRF
Band B: 200k, 1M, 3M, 10MHz tuning
  frequency with 500Hz PRF
Best uncertainty(k=2): ±0.83dB
繰り返し周波数による変化 (CISPR 16-1-1, 6.4.2)
Variation with repetition frequency
(Relative calibration)
 限度値
 規定値に対して+3dB, -1dB以内
Band A: 25, 50, 100Hz PRF
  at 100kHz tuning frequency
Band B: 100, 250, 500, 1k, 5kHz PRF
  at 1MHz tuning frequency
Best uncertainty(k=2): ±0.31dB
備考) PRF = Pulse Repetition Frequency (パルス繰り返し周波数)

 Band A(9kHz-150kHz)およびBand B(150kHz-30MHz)における平均値検波器のパルス応答の校正は、追加料金無しの弊社標準校正でご提供します。是非この機会に弊社校正サービスをご利用下さるようお願いします。
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