校正雑学 - 不確かさ評価の実際 (2)
** 高周波電力測定 **
 一般に良く利用されているパワーメータとパワーセンサを使用して、図1で示すように、信号発生器の高周波電力出力を測定する場合の測定の不確かさを考えてみます。
図1
 まず、測定結果に影響するであろう要因をリストアップします。主な要因を表1に示しますが、これらが要因の全てではありません。あくまで例としてお考え下さい。それぞれの要因の不確かさを、当該機器の技術仕様書から引用します。なお、ここでは内容を簡単にする為、測定する電力を0dBm〜-10dBmに限定しています。また、表1の6項のパワーセンサの校正係数の不確かさは、センサの校正証明書に記載されている値(k=2)を引用しました。

 表1に記載しました個々の要因の細かな解説は割愛させて頂きます。詳しくは当該測定器のガイダンス等を参照して下さい。

No. 不確かさの要因 不確かさ(例) 分布 除数
1. パワーメータの計測絶対不確かさ ±0.5%(線形) 一様 √3
2. 校正時のパワーメータの不確かさ ±0.5%(線形) 一様 √3
3. 電力基準出力の不確かさ ±0.9% ガウシャン 2
4. パワーメータのドリフトの不確かさ(0〜-10dBm range) ±0.00009% 一様 √3
5. パワーメータ&センサノイズ(0〜-10dBm range) ±0.45% 一様 √3
6. パワーセンサの校正係数の不確かさ ±1.3% ガウシャン 2
7. パワーセンサの直線性(0〜-10dBm range) ±2.5% ガウシャン 2
8. 電力基準出力とセンサ間の不整合 ±0.01% U字型 √2
9. センサとSG出力(VSWR<2と仮定)間の不整合 ±0.215 U字型 √2
10. 繰り返し性(Repeatability) ±0.46% 正規 1
表1

■合成標準不確かさおよび拡張不確かさの計算

 表1の値を基に、不確かさバジェット表を作成し、合成標準不確かさおよび拡張不確かさを導出します。その結果を表2に示します。

表2
Type=不確かさ評価のタイプ、Dist=分布の形状、U or a=拡張不確かさあるいは最大限界の半幅
Div=除数、vi=自由度、ci=感度係数

 結論として、「周波数範囲xx〜xxMHzでの0dBm〜-10dBmのRF電力測定の測定の不確かさは±3.13%であり、この値は約95%の信頼水準を与える包含係数k=2を掛けた標準不確かさに基づいている」と表現できます。
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