校正雑学 - 機器のウォームアップ (2)
RF電力測定編
 パワーメータとパワーセンサを使用したRF電力測定で、使用する測定器の通電時点からの指示値の変化量を測定してみました。測定配置を図1に示します。

図1

 測定を簡便にする為に、信号発生器(SG)とパワーメータは同時に通電し、SGの出力周波数とレベルの設定を一定に保ち、パワーメータの指示値を1分毎に測定してみました。SGの出力周波数は50MHz, 出力レベルは0dBmとしました。その測定結果を図2に示します。図の横軸は機器の通電開始からの時間(分)、縦軸はパワーメータの指示値(dB)を通電時を0dBとした時の相対値でプロットしたものです。70分の観測期間内での室温変化は1℃以内でした。

図2

 この結果から、使用したSGとパワーメータ/センサの組み合わせでは、双方共に1時間ほどウォームアップすれば、±0.01dB以内の安定状態が得られることが判ります。但し、出来ればあと数時間の連続観測を行って、機器が確実に安定状態であることを確認したほうが望ましいでしょう。

 次に、上記の測定で使用したSGとパワーメータ/センサを使用して、1W出力の高周波パワーアンプのゲインがどの程度変化するかを測定してみました。図3に測定配置図を示します。SGとパワーメータ/センサは、1時間以上の通電を行っていますので、前述の実験から±0.01dBの安定状態であると見なします。周波数は50MHz、アンプのゲインは約33dB、測定開始時にアンプ出力が0dBmになるようにSG出力を調節した上で測定しました。

図3

 測定結果を図4に示します。図の横軸はパワーアンプの通電開始からの時間(分)、縦軸はパワーメータの指示値(dB)をパワーアンプの通電時を0dBとした時の相対値でプロットしたものです。図中の青い線は近似曲線(多項式近似)です。なお、120分の観測期間内での室温変化は2℃以内でした。

図4

 この結果から、使用した高周波パワーアンプの通電時からのゲイン変動は、ほぼ+0.02dB/-0.03dB以内であることが判ります。例えば、0.1dB以上の測定精度を必要としないような測定において、このパワーアンプを使用する場合は、パワーアンプのウォームアップ時間にさほど神経を使う必要は無いと言えるでしょう。

 このように、測定器の持つ固有のドリフト特性をあらかじめ把握しておくことは、特に高精度測定を行う場合は、重要な要素の一つとなります。これらを踏まえた上で測定器を適切に使用することで、より不確かさの小さな高精度測定の実現が可能になります。
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